旅の余白 | 京都編
- Sakura Nimura
- 2024年12月20日
- 読了時間: 4分
更新日:5月1日

海外在住者によくありがちなのは、日本に一時帰国すると、いい意味でゆっくりできない、ということがあります。
会いたい人はたくさんいるし、やりたいことも満載。
気持ちが昂ってつい無理をして、途中で体調を崩してしまう、または自宅に戻ってきてぐったりする、という体験は、きっと珍しくないと思います。
10代の頃からアメリカと日本を行き来する生活の中で、ある時、そんな状態が精神的に負担になっていることに気がつきました。年齢が上がってきたせいもありますが、体調不良を覚悟で旅行するなんて、気が重くなります。楽しみな一時帰国なのに、同時に気持ちが重たくなるなんて嫌だ、と思いました。
そして考えたのは、なんで疲れなくてはいけないのだろうということ。
よくよく考えてみると、そのほとんどは自分自身で作り出している忙しさだと気がつきました。家族やそれ以外の人の都合に合わせなければいけないことももちろんありますが、でも自分で調整できるところまで忙しく動く必要があるのかな?と考え始めました。
そんな経験を踏まえて、ここ数年は日本滞在時にも”余白の時間”を作るようにしています。予定を詰め込みすぎないで、ゆっくりと過ごす日を何日か入れるのです。
ときには、心を美わしてくれるような場所に滞在して、そこでゆったりとしたスケジュールで過ごします。
そんな目的で訪れる場所の一つが、京都です。
京都では大体いつも岡崎エリアに滞在して、ゆっくりと過ごしています。忙しく予定を詰めずに、気の向くままに散歩しつつ行き先を決める。まさに余白の時間だらけの旅行です。

お気に入りの宿のひとつ、南禅寺参道菊水。
今回は紅葉のピークと重なっていて宿泊は叶いませんでしたが、ランチで伺った際には予約なしにも関わらず、なんと個室を用意してくださいました。しかも、そのお部屋の名前は「さくら」と、わたしの名前です。なんて粋な計らい。
このお宿の庭は、南禅寺界隈の邸宅を数多く手がけた七代目・小川治兵衛の作庭によるもの。820坪と決して広くはないけれど、随所にストーリーが感じられ、歩くたびに新たな発見があります。現在も庭師さんがフルタイムで丁寧に手入れをされており、お食事をしながら作業の様子がちらりと見えるのもまた一興です。

訪れたタイミングがちょうど紅葉の見頃と重なったのも、奇跡のような出来事。
例年より2週間ほど遅れたピークのおかげで、永観堂では燃えるような紅葉に出会うことができました。自然が見せてくれる、この偶然に感謝です。

京都で必ず立ち寄るのが、地元の人々に愛される小さなお寿司屋さん「とよ寿司」。
カウンターに座って丁寧に握られたお寿司をいただくも良し、テイクアウトしてホテルでゆっくり味わうも良し。気取らないけれど温かな心遣いが嬉しいお店です。

この冬のアートプロジェクトは、和紙を使ったランプ作り。
アメリカではなかなか手に入らない、上質な和紙を京都で購入してきました。人間国宝による作品からモダンなものまで多種多様で、最初は圧倒されましたが、お店の方に相談しながら5種類ほどを選びました。今から製作がとても楽しみです。
そして京都といえば、和菓子も外せませんよね。
お気に入りは、紫野和久傳 堺町店。ミシュランの料亭が手がけるお菓子屋さんで、味わいはもちろん、静かにジャズが流れるカフェスペースもとても落ち着く空間です。今回は写真を撮り忘れてしまいましたが、歩き疲れた身体をそっと癒してくれる、至福の時間でした。


もう一つ、密かな楽しみは、梨木神社の境内にあるカフェ。
友人と偶然見つけて以来、神社に参拝したあと、縁側でほっとひと息つくのが定番になっています。

また、とってもおしゃれな空間のKaikado Cafeも素敵です。茶筒で知られる開化堂が手がけるカフェです。茶筒型のチーズケーキが濃厚でとっても美味しいです。

でも結局、何よりも心が緩むのは、お気に入りの和菓子を持ち帰り、ホテルで緑茶を淹れていただくひとときです。自分に還る時間。これもまた、旅の大切なリチュアルのひとつです。
部屋に戻って、旅の記録を綴りながらゆっくり休憩するこの時間は、インスピレーションや気づきが流れ去ってしまわないよう、意識に留めておくための小さな習慣でもあります。
私にとって旅とは、結局、そういうことなのかもしれません。
一時帰国の合間に作り出した余白の時間。
ゆとりのある時間で気持ちも身体も整って、その後の旅も順調に楽しむことができました。
今回宿泊したのは、ホテルオークラ岡崎別邸。
日本のモダンホテルらしい行き届いたサービスと、静かで快適なお部屋で、深く深くリラックスすることができました。
京都に限ったことではありませんが、日本は本当に美しいなと思います。
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